フォロンの挿絵本「Ter overweging(Issues for Consideration)」 |
この冊子風の挿絵本『検討のための問題点(Ter overweging)』は、ベルギーの通信事業大手のベルガコム(Belgacom)が1999年の年報として発行したもので、フォロンとビジネスにおける創造性の開発と育成を専門とするベルギーの数学者で哲学者でもあるリュック・ド・ブラバンデール(Luc de Brabandere, 1948-)の協力を得て、それぞれの分野や企業が直面する様々な場面において“敢えて事を行なう”勇気ついての知見を纏めたものです。フォロンが表紙を含め、三点の水彩画を提供しています。幻想的な色調が印象的な表紙絵は、フォロンが1970年代にシルクスクリーンの版画やポスターで何度も取り上げた《綱渡り》を主題としており、ブリュッセルにある巨大なベルガコムのタワーを見下ろすような高みに張られた綱を渡ろうとしている人物が、帽子を飛ばされてながらも、オランダ語の“Durven(~する勇気)”という言葉を掴もうとしている場面を描いたものです。文中に挿入されている二点の挿絵についても、1960年代の後半から70年代にかけて制作された銅版画を彷彿させますが、銅版画に見られるモノトーンの沈潜する画面とは異なり、見る者に先ず色彩を感じさせる、色彩の持つ力が強く出た作品となっています。