フォロンのポスター 「VENCE 73」(2) |
画像1&2:フォロンのポスター、1973年制作:[作品名]Vence73(1)(2)、[サイズ]650x500mm、[技法]Silkscreen(Serigraph),[出版者]Ivry Gitlis、[刷り]Jacques Marquet,Paris
最近入手した「Vence 73」(2)から、このポスターにも、「L’Arbre」や「POL」と同様、刷りのヴァリエーションが在ることを確認することができましたので、画像をアップします。先に挙げた「L’Arbre]の例と比べると、「Vence 73」(1)と(2)の違いはそれほど大きなものではありませんが、それでも人物に当たる光の幅とグラデーションが使われている影の部分の濃淡の違いはお判りいただけると思います。「Vence 73」(2)では明と暗の区別がはっきりと出ており、「Vence 73」(1)にある光が当たっている部分から暗い部分への自然な諧調がみられません。それには、「Vence 73」(2)を演奏者よりも演奏そのものに焦点を合わせたものにし、弓を引くヴァイオリン奏者の手とヴァイオリンの中心部分にスポットライトが当っているような作画を行い、見る側の注意をそこに集めようとするフォロンの狙いがあったのではないでしょうか。
ヴァイオリン奏者、イヴりー・ギトリスの発案と呼び掛けによるこの国際音楽祭はその後も継続して開催され、フォロンのデザインによるポスターも、イヴリー・ギトリスの肖像でもあるモチーフはそのままで、出演者の名前の他に、配色やサイズを変えたヴァージョンが作られています。1976年度版のポスターは、73年度版が縦650mm、横500mmであったのに対し、縦1127mm、横800mmという大きなサイズのもので、73年度版の背景に使われていた青色が人物に使われ、背景には、音楽祭が始まる時刻を示す、太陽が地平線に沈んだ後の夕映えの空がオレンジ色の諧調-地平線に近い部分は赤味が増し、上空は暗くなっていきます-によって描き出されています。そして、空の色と、それとは対照的な濃い青色に包まれた人物とによって作り出された幻想的な光景が、世界各地から集まったミュージシャン達の演奏の妙技が織りなす色彩に満ち溢れた音楽祭を予感させるのです。