フォロンのポスター「Blue Shadow/L'Aube」 |
フォロンはセーヌ川に浮かべた自身の船「ブルーシャドウ(Blue Shadow)」を個人事務所として使っていましたが、これはその事務所の広報用に制作したポスターです。使われているのは、フォロンが1972年に制作した「暁(L'Aube)」という、シルクスクリーンで作られた版画作品です(注1)。帽子の男が山の向こうから顔を出し、こちらを見つめていますが(注2)、その目は夜明けの太陽を映し出しています。これはフォロンの言うところの“未知の創造者”の視線で、“毎朝夜明け前、地球を見渡す視線”を表しているとのこと。このイメージは1995年に日本で開催された『フォロン展』の際の告知用ポスターやチラシにも使われていたので、ご存知の方も多いかと思います。海外の業者の中には、このポスターを原画と同様、シルクスクリーンと表記していることがありますが、実際はフォロンがポスターや挿絵本の制作において全幅の信頼を置いていたイタリアのミラノに印刷所を構えるエリ&パガーニ(Elli & Pagani, Milano)によるオフセット印刷です。夜明けの清々しさを演出する青を基調とする画面に赤い太陽がアクセントとなり、影の部分を効果的に用いたタイポグラフィもうまく画面に溶け込み、非常に印象的なポスターに作り上げられています。日本でも人気が高いポスターのひとつです。
フォロンは事務所設立時の1980年にも「青い影(Blue Shadow)」という題でポスターを制作していますが、この時は親友のミルトン・グレイザーにも競作という形で同名のポスターの制作を依頼しています。
注:
1.「暁(L'Aube)」という作品は最初、パリの画廊兼版元Editions Galerie Lahumière, Parisから1970年に限定200部で出版されていますので、1972年版は再版(2nd. edition. Ed.60?)ということになるでしょうか。
2:この構図は1977年に20周年を迎えた「スポレート芸術祭」の公式ポスターにも使われています。