フォロンのイラストレーション「Horizon(1965, Vol.VII, No.3)」 |
フォロンは1965年の初頭に初めてニューヨーク市を訪れますが、渡航前にアメリカの季刊美術誌「ホライズン(Horizon - The Magazine of the Arts)」から依頼されて描いた5点のドローイングは、フォロンが頭の中で作り上げたニューヨークのイメージで、「ニューヨーク、未だ見ぬ土地」と題され、1965年夏季号に掲載されました。フォロンが思い描くニューヨークは、迷路のように入り組んだ通りであったり、ジグソウパズルのように様々な人間が組み合わさって成り立つ街であり、新聞に夢中になって歩く歩行者の姿(このドローイングは1974年に、雑誌「The New York Times Magazine」の10月6日号の表紙を飾りました)や林立するテレビ・アンテナ、そして雨後の竹の子のように地面に生え、画一的なパターン模様の窓を持つ四角形の箱のようなビルとその谷間で呼吸する一本の木です。
いずれのドローイングでも人間は非常に小さな存在として描かれており、生命の揺籃の場である自然と対抗するように、絶えず増殖していく無機的で複雑な構造体である大都会は反面、人間の叡智の結晶でもあり、その威容に圧倒される気持ちも同時に含まれているのではないかと思われます。