フォロンの銅版画集「Jeux de mains」 |
日本の某人気推理小説家が自身の小説の中で取り上げたフォロンの三点の作品「昨日(Hier)」「今日(Aujourd'hui)」「明日(Demain)」の画像を探している方がいるようで、以前からこのブログにも時々アクセスがあります。ただ三点を一括りにして検索していることが多く、わたしも最初そんな作品があるのかと思い、水彩画やデッサンなど、いろいろ探してみましたが、見つかりませんでした。題名だけでは無理かと思い、本屋に出掛け該当する箇所を拾い読みしたところ、それぞれの絵柄について記されており、ようやくどの作品を指しているのか判明しました。フォロンが1979年から80年にかけて制作した四点の銅版画からなる版画集「手のたわむれ(Jeu de mains)」の内の三点のようです。小説が刊行されのは1987年で、1985年から86年にかけて日本各地を巡回したフォロン展からさほど時間が経過しておらず、某小説家がこの展覧会の会場に足を運んだ可能性は十分あります。時期としては、上京する直前の1986年3月、場所は愛知県立美術館。そして出品されていた銅版画集「手のたわむれ」に心を惹かれ、その思いを最新作の中で表明した、という月並みの推理は如何でしょうか。
某小説家のように自身の作品にフォロンの作品を登場させるのは稀なケースかもしれませんが、創作活動を行なっている人たちの中には隠れフォロン・ファンという方が結構いるようで、そういう方たちに表でもっと発言・カミングアウトしていただけると、展覧会開催の機運も高まるのではないか、と淡い期待を抱いています。
この記事が検索難民の方の一助となりましたら幸いです。
参考文献:「フォロン展」図録、1985年(毎日新聞社)、No.55~58(手のたわむれ-きのう、きょう、あす、対話)