フォロンのポスター「Folon(2)」 |
フォロンが1973年にパリのラウミエール画廊(Éditions Galerie Lahumière)から出版した眼鏡をモチーフにしたシルクスクリーン・ポスターは以前取り上げたことがありますが、このポスターのアイデアの元になったかもしれないものを見つけました。フォロンの友人でグラッフィク・デザイナーのミルトン・グレイザー(Milton Glaser, 1929-)が1967年にパリのデルピール画廊(Galerie Delpire)で開いた個展の際にデザインした招待状です。グレイザーは1951年にクーパー・ユニオン・アート・スクールを卒業後、フルブライト奨学金を得て、1952年から翌53年にかけてイタリアのボローニャのアカデミー・オブ・ファイン・アーツおいてフォロンの敬愛する二十世紀イタリアの画家ジョルジオ・モランディの下でエッチング学んでおり、フォロンと同様1960年代後半にイタリアの事務機器メーカーのオリベッティ社から広告ポスターを依頼されています。当時、パリのアパルトマンをアトリエとしていたフォロンもこの招待状を受け取っていたはずで、見るという行為を象徴的に表す眼鏡とそこに映りこむ外界というアイデアは、大いにフォロンの興味を惹いたのではないかと思われます。三つ折りでデザインされたグレイザーの招待状は、眼鏡のガラス(レンズ)部分に展覧会情報を映し出したものですが、フォロンは目に映る光景を描き入れ、見る側が自らのこととして画面と向き合い、その意味を問う、という作品に創り上げています。このイメージを用いた「La Double Vue」という題の版画作品とアルミニウムを用いたオブジェも作られています。