フォロンのポスター「Il n'y aura plus d'arbres」 |
フォロンは1968年、イタリア系フランス人の映画・演劇俳優ルフュ(Rufus, 本名:Jacques Narcy 1942-)が脚本を担当した舞台「もっと多くの木があるでしょう(Il n'y aura plus d'arbres)」の1968年パリのアルファ347劇場(Théâtre Alpha 347) での公演の宣伝ポスターをデザインしています。ルフュはポスターに使われた、自身を別な存在として操る演劇の有り方を視覚化したこのモチーフが気に入っていたようで、1980年にリリースされた自身のレコード・アルバム「Rufus La Chanson/ Musique de Jean Marie Sienna」(RCA PL37459, 1980)のカバーアートとその公演の際の宣伝ポスターにも使っています。
ルフュ自身の思い入れはさて置き、私たち日本人にとって興味深いのは、このイメージが先ず1969年3月20日に講談社から発行された季刊誌『グラフィック デザイン(graphic design)』の第33号(注1)の特集記事「フォロン作品集」の冒頭に使われ、その翌年の1970年に銀座のソニービルで開催された、日本で最初の大きな展覧会「ジャン=ミシェル・フォロン展」の広告と案内状-ともにシルクスクリーンで刷られています-にも使われたことではないでしょうか。日の丸をイメージさせるかのような、赤と白を基調とする単純な構成は、特に日本人の心に響くのかもしれません。
注:
1.日本の美術評論家で、殊にデザイン評論の草分け的存在であった勝見 勝(Masaru Katsumi, 1909-1983)が1959年に創刊した季刊誌『グラフィック デザイン(graphic design)』第33号: