フォロンのポスター「Follia Pianistica」 |
フォロンは1988年、妊産婦と新生児の健康のための国際協会《International Association for Maternal and Neonatal Health(IAMANEH)》の主催で、フォロンも1975年に展覧会を開いたことがあるベルギーのブリュッセルにあるパレ・デ・ボザール(Palais des Beaux-Arts, Bruxelles/Paleis voor Schone Kunsten, Brussel)で催された10台のピアノによる慈善募金コンサート『Folli Pianistica《狂気のピアノ作品)』(注1)の公演ポスターをデザインしています。未だ実物は見たことはありませんが、イメージ部分を版画用紙に別刷りしたオフセットリトグラフの作品も同時に制作されているようです。
このコンサートに出演するピアニストは全部で12人。フォロンはピアニストをその象徴であるピアノの鍵盤(白鍵と黒鍵)になぞらえて表現しているようです。画面の背景には、青く染められたピアノの鍵盤が壁を形成するように立ち、その手前には4組の鍵盤のブロックが立ち並んでいます。それらは何らかの儀式が執り行われたであろう古代遺跡の象徴性を帯びた石柱を想起させますが、演奏会(という儀式)が四つのパートからなることを意味しているように思われます。前列の白鍵は青く染められており、黒鍵の表部分が青と赤に染め分けられています。白鍵3と黒鍵2からなる左手前のブロックは、5人のピアニスト、白鍵4と黒鍵3からなる右手前のブロックは、7人のピアニストということになるのでしょうか。黒鍵の内のふたつの表部分が赤く染められていますが、これは二人の女性ピアニストが参加しているからのようです。
フォロンは1982年頃にイタリアの子供用知育楽器メーカー「ボンテンピ(BONTEMPI)」のオルガンの広告用イラストレーション(注2)を手掛けているのですが、そのイラストレーションでも鍵盤を強調するように描いていていることから、このポスターのアイデアの元になっているのかもしれません。
注:
1.このコンサートは、癌とその治療法の研究所の設立を目的に設立されたイヴォンヌ・ボエル財団(Fondation Yvonne Boël)後援で、幼児問題や家族問題、健康問題に関心を持ち、1964年からはルクセンブルク赤十字の総裁も勤めたルクセンブルク大公妃ジョゼフィーヌ=シャルロット(Joséphine-Charlotte Ingeborg Elisabeth Marie-José Marguerite Astrid, 1927-2005)列席の下、行なわれました。
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