フォロンのカバーアート「Walking journey - Letting the wind and age」 |
東京の新潮社から1986年に刊行された随筆家・高田宏(Hiroshi Takada, 1932-2015)の著書『歩く旅 風まかせ年まかせ』のカバーアートにフォロンが1982年に制作した三点組の銅版画集「木を植えた人(L'Homme qui plantait des arbres」所収の作品(二番目のプレート)が使われています。新潮社からは1972年から1986年にかけてフォロンの版画作品をカバーアートに用いた本が三冊出版されていますが、この本は三番目のものです。この作品が選ばれたのは、著者の樹木に対する関心や文章が契機になっているのかもしれません。ご存知のように「木を植えた人」はフランスの作家ジャン・ジオノ(Jean Giono, 1895-1970)が1953年に発表した、ひとりの男が荒野にもくもくと木を植えることで森が再生していくという短編小説ですが、フォロンも、地球環境を維持するために不可欠な木に対する関心は比較的早く、自身の作品の重要なモチーフのひとつとなっています。1973年に刊行された水彩画集「La mort d'un arbre(邦題:木は死んだ)」では、冒頭にフランスの詩人サン=ジョン・ペルス(Saint-John Perce, 1887-1975)の言葉「本、それは一本の木の死である(Un livre, c'est la mort d'un arbre)」を掲げ、私たちの文化に深く関わり、様々な恵みをもたらしてくれる木をどう捉え、どう向き合っていくべきかとの問いを投げかけています。