フォロンのアルバムカバー「Riccardo Cocciante - Anima」 |
このレコードは以前より興味を持ってはいたものの、イタリアからの郵便料金が度重なる値上げのため、レコード本体の価格(500円程度)の5倍(2500円)近くなってしまい、ずるずると入手を先送りしていましたが、思いきって購入することにしました。
そのレコードと言うのが、イタリア人の父親とフランス人の母親のもと、第一次インドシナ戦争が勃発する1946年にベトナムのサイゴンに生まれたイタリア人シンガー・ソングライター、 リッカルド・コチャンテ(Riccardo Cocciante, 1946-)の出世作となったLPアルバム「Anima」(アレンジをフランコ・ピサーノとエンニオ・モリコーネが担当したのも後押しになりました)で、そのカバーアートにフォロンが1973年に制作したシルクスリーンの版画「Le cœur et l'équilibriste(ハートと曲芸師)」(注1)が使われています。画像は1975年にリリースされた(2nd Press)です。このアルバムの人気は高く、2010年には画面全体の色調を変えた復刻版が500部限定で発売されています。
コチャンテもこの作品を気に入っていたようで、1976年制作のLPアルバム「Quand un amour」(ダブルジャケット/Gatefold)(注2)にもこの作品を使っているのですが、そちらには青紫を背景としたものが使われています。また1979年にはアメリカのシンガー・ソングライターのジーン・コットン(Gene Cotton, 1944-)とアメリカン・エースのLPアルバム「No string attached」(Ariola Records America - SW-50070)(注3))にもこの作品が使われています。以前取り上げたことのあるアメリカのフュージョン・ジャズのギタリスト、スティーヴ・カーン(Steve Khan, 1947-)が1977年に制作した初リーダーLPアルバム「Tightrope」(Tappan Zee Records – JC 34857)にも同じモチーフの作品が使われていますが、そちらは水彩によるものです。
注:
1.
フォロンのシルクスクリーンのポスターや版画の刷り師であったジャック・マルケの画廊で1973年に開催されたの《ハート》をテーマとする展覧会の告知用ポスター。フォロンによると、1974年8月7日、今は無きニューヨークのワールド・トレード・センター(World Trade Center)のふたつのビルの間に綱を張り、無許可で綱渡りを敢行したフランス人曲芸師フィリップ・プティ(Philippe Petit, 1949-)の新聞記事に触発されて制作したもので、背景が赤紫と青紫の二種類のヴァージョンが作られました。カバーアートに使われた版画作品「Le cœur et l'équilibriste(ハートと曲芸師)」も同時に制作されています。
2.