フォロンのポスター「La France à la triennale de Milan 1968」 |
「Decorative industrial and modern Arts and modern architecture」をテーマに、デザイン・ファッション・建築・都市計画・メディアアートなど、産業と芸術との関係を扱う国際博覧会であるミラノ・トリエンナーレは、1923年にモンツァで装飾芸術のビエンナーレとして始まり、1930年からはトリエンナーレとなります。ミラノに移ったのは1933年からで、その14回展(XIV Triennale di Milan)は、1968年5月15日から7月14日まで開催されました。イタリア政府は、事務機器メーカーのオリベッティ社のお蔭で、新しいフォロン(作品)の資金を得ることが出来、フォロンはフランス館の壁に、最初の壁画作品となる、ポリエステルを支持体にしたフレスコ画を描き、500個の光の点で動きをつけた36平方メートルの壁画を制作しています。また、5月30日から7月30日まで開館したフランス館の広報用ポスターも制作しており、ポスターはシルクスクリーン制作され、刷りはパリにシルクスリーンの工房を構える刷り師ジャック・マルケ(Jacques Marquet, Paris)が担当しています。
このポスターはパリの装飾(芸術)美術館(Musée des Arts Décoratifs, Paris)にも収蔵されていますが、市場に現れることは滅多にありません。これまでに二度ほど、手に入れるチャンスがありましたが、フォロンの作風とあまりにかけ離れているように思われ、購入を見送ってしまいました。しかし、そこにはフォロンらしいアイデアが込められていることが分かります。フォロンは青色一色を背景に、画面を縦二つに分割、それぞれに交通信号らしきものを大きく描き入れています。その信号の色に注目して見ると、向かって左側の信号(青・白・赤)はフランスの国旗、右側のそれ(緑・白・赤)はフランス国旗の意匠を起源とするイタリアの国旗を表しているかのようですし、フォロンの壁画作品における両国のコラボレーションを示しているようにも見えます。ただ、、産業と芸術との関係を取り扱うというミラノ・トリエンナーレの性格から来るものかもしれませんが、その単純で幾何学的なデザインは機械的で無機質な表情を見せており、人間性に重点を置いたフォロン作品からはかけ離れているため、一見しただけではフォロンの作品とは判りません。そういった理由もあり、シルクスクリーンで刷られたフォロンの初期のポスターのひとつなのですが、なかなか触手が伸びないポスターではあります。