フォロンのグリーティングカード「Happy Holidays」 |
昨年の3月、血液の癌に冒され何年もの間入退院を繰り返していた友人が、過労による心筋梗塞で倒れてしまいました。なんとか一命は取り留め、その後暫らく小康を保っていましたが、7月の初めに病状が悪化し、とうとう帰らぬ人となってしまいました。四年前、腎不全で入院したときに癌と告げられ、治る見込みは無いとまで言われましたが、いつも心のなかに希望を持ち続けることで病気を封じ込めていました。その彼が初めて弱音を吐いたのは、亡くなる数日前で、病状が悪化したことも知らずにいつものように入院中の彼の病室を訪ねると、「しんどい、もうあかん」と言い出し、心の底に封じ込めてあった不条理な現実に対する悔しさを露わにする彼の姿を見て、命を繋ぎ留めていた希望が壊れてしまったのかと思うと言葉も出ず、ただ戸惑うばかりでした。暫らくすると、少し落ち着いたのか痛む身体を起こし、いつものように軟弱な人生を歩もうとするわたしを叱咤してくれたので、少し安心し、また来るからと病室を後にしましたが、その数日後に彼の奥さんから電話を受けることになってしまいました。
友を失った心の空白はなかなか埋まりそうもありませんが、時間だけは過ぎて行き、また新しい年を迎えることになりました。寂しい気持ちに押し流され、自分から夢が無くなっていくように思えてなりませんが、新年早々、嬉しいニュースが飛び込んで来ました。1月9日(水)から1月31日(木)かけて、東京日仏学院でフォロンのポスター展が開催されるとのこと。ベルギー観光局ワロン・ブリュッセルと東京日仏学院の共催で、今年の4月から9月までの半年間の間,ワロン地域圏の様々な場所で行なわれる「Folon2008」に合せての開催だそうです。フォロン財団も協力しているようです。35点ぐらい展観されるようですが、出品リストが手に入るようでしたら、追ってお知らせしたいと思います。この展覧会が、さらに大規模なポスター展への道を開いてくれるものと信じ、フォロニアムを続けたいと思います。
明日への夢や希望を持つというのはごく普通のように思えますが、世界のいたるところにそれを許さない現実があります。ユニセフ(国連児童基金)は子供たちが人として生きる権利を守る活動をしていますが、それを支える事業のひとつにグリーティング・カードの発行があります。昨年の暮れに、フォロンが依頼を受けデザインしたクリスマス用のグリーティング・カードを運良く入手することができました。図像部分が切り取れるようになっていて、サンタクロースの帽子の上にあるポッチを取り、そこに紐を通すと、クリスマスのオーナメントとしても使えるようになっています。制作年は記されていませんが、アルミや銀紙を貼り付けた紙を支持体にシルクスクリーンで刷るという、フォロンが1970年代初期に用いた手法で作られており、裏側には、英、仏、西、露、中の五ヶ国語で、クリスマスの挨拶が記されています。フォロンはこの他にもユニセフからの依頼で、「Les 1000 jardins du desert」(1986年)と「L’Espoir des enfants du monde」(1988年)という二種類のポスターを制作しており、2003年には、ベルギーのユニセフ国内大使に任命されています。