フォロンのポスター「Amnesty International」 |
アムネスティー・インターナショナルは1977年、“良心の囚人年”に因み、非暴力的な方法で意見の表明を行なった結果、逮捕、投獄された政治犯の救済と人権擁護を求めるキャンペーンポスター「Artits for Amnesty」のデザインを、日本の横尾忠則氏を含む世界のアーティスト15人に依頼、ポスターを発行しました。それらのポスターは世界16ヶ所のギャラリーや美術館で展示され、ポスターの販売によって得られた収益はアムネスティー・インターナショナルの活動を支える資金になっています。
フォロンのポスターを見たとき、私たちはまずその色彩の美しさに目を奪われてしまいます。それは優しさや愛おしさといったような母性的な言葉を連想させますし、人を平和な気持ちにさせはしないでしょうか。叙情的な光景を思い浮かばせる色彩を使い、ただ甘い感傷に流されているだけではないか、と言うのは簡単ですが、不当に拘束され、尋問や拷問を受け、一日のすべてが、ほんのひとときのやすらぎさえ許されない、ヒリヒリするような時間であったならば、何かを夢を見たり、想像することすらできなくなってしまうでしょう。フォロンはそのことの逆説的な意味を、このポスターを見る側に問いかけているのではないでしょうか。たとえ鉄格子に囲まれ、肉体的、精神的苦痛のなかにいる人たちの訴える真実が理解できないとしても、その状況に対し、ただたんに傍観者の立場でいることが、このポスターのような安らぎを彼らにもたらすものではありません。彼らの希望や夢は私たちの心のなかにあるのですから。もし真実の一端に触れたなら、もはやその事実からは逃れることはできないのです。良心のあるかぎり。