フォロンのポスター「Festibelfilm」 |
何かの超常現象を描いたかのように見えるこのポスターは、フォロンによると、ベルギーの映画祭のために制作したポスターで、映像を追い求めて出掛けて行く二つの眼を表わしているのだそうです。そして、「映画館に入ると、眼は(映画を)待ちかねて(身体から)分離します。(館内の)光がゆっくり消えると、(映像に)眩惑されることを強く願うのです。」とも言っています。フォロンは、わたしたちが映画の世界に引き込まれ、眼がスクリーンに釘付けになる状態を、身体から分離した眼によって表わしています。「心ここに在らず」という言葉がありますが、映画を観ている状態は、このポスターでフォロンが描いた人物のように、映像を追う眼がスクリーンのあちこちに向けられ、それを認知・理解しようとする脳のある頭と感じようとする心のある胸の部分は、機能している状態を示す赤色で着色され、容器として身体には青色が使われています。ただ都会の喧噪を嫌うフォロンの皮肉なのか、視覚芸術に身を捧げた証なのか、もうひとつの大切な感覚器官である耳は、フォロンの作品ではほとんど描かれることはありません。